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美術館の展示室がリニューアルいたしました。
昭和45年(1970)から一般公開を始めた遠山記念館は、建築家今井兼次の設計になる美術館を建設して、コレクションの展観をしてきました。ブロンズ扉の入口を入ってロビーの両側に設けられた小さな展示室(63㎡,70㎡)に、日本美術とオリエント美術から選んだ収蔵品を飾ることからスタートしています。
今井兼次75歳、集大成といえる最後の建築作品で、ディテールにこだわりの創意が籠められています。単なる飾りではない意味づけされた装飾が、溶け込むように埋め込まれており、可憐なフレスコ壁画やステンドグラスに眼を引かれた方も多いことでしょう。
創立者遠山元一と今井兼次との関係は、遡ること12年前に長野県安曇野の碌山美術館(今井兼次設計)設立に元一が協力をしたころに始まります。キリスト教関係の建築作品をいくつも手掛けてきた今井兼次こそ、自らの遠山記念館展示室の設計に最適者であると考えたからでした。
キリスト教徒である遠山家から聴取りをした今井兼次は、家族の信仰と生き方を建築造形として表現することに情熱を注ぎました。
今回の美術館改修工事は、こうした今井兼次独特の意匠を損ねないで、美術品の展示環境や、空調設備、照明設備を最新のスタイルに移し替えることが基本姿勢です。
展示ケースは、内部の温湿度を適正値内に維持できる機密性の高いエアタイトケースにしました。
また、これまで腰屋根ガラス窓からの自然光を、展示室内にトップライトの間接光で採り入れていましたが、紫外線などの影響を受けやすい書画や染織品を展示することが多いため、展示室内への光を遮光し、ケース内の人工光による安定した明かりで作品を照明することに替えました。調光のできる上下からの安定したLED照明ですので、作品がより鮮やかに美しく見られるようになります。空調設備も大型のものに刷新し、入口のブロンズ扉の内側にガラスの自動扉を付けることで、建築全体の環境も快適になります。受付もロビー内に移動して、ショップスペースも設けました。ゆっくりと買い物をお楽しみいただけます。
改修工事は、美術館設計管理施工に実績のある株式会社ムラヤマに発注し、展示ケースは 株式会岡村制作所が担当しました。既存部分との調和を優先する手間のかかる工事を丹念に実施してくれました。