遠山記念館トップ> コレクション> 日本染織> 波に松原文字模様帷子(白麻地 染・繍)
江戸時代中期(18世紀)
丈156.7cm 裄63.0cm
麻地に青海波崩しの波模様と松原を配し、肩には「万代万世」の瑞祥の文字をあしらった帷子です。 技法は、波を藍蝋により描き、松は摺匹田と刺繍で表されています。この刺繍は、紅・紫・金糸と少ない色数ながら松の輪郭や枝・幹に用いられ、平面的になりがちな全体の模様に立体感と豪華さを与えています。
模様構成は、比較的大模様であること、右袖から腰を横断しさらに裾へと続く波の力強い表現、左腰部分に余白を残すなど、寛文模様の構図を受け継いだ江戸時代中期前半のものと考えられます。
帷子とは、麻地で裏のない単衣仕立ての小袖をいいます。夏の衣料には、初夏から盛夏そして初秋へと変化する暑さに応じて、通気性に富む麻地や、肌ざわりのよい薄手の絹(紗・絽・絹縮など)が使われました。この帷子は、小袖模様をそのまま麻地に用いたような豪華さがあります。斜めに流れる大きな波と右へ左へと幹を伸ばした樹の間には、涼しい風が通いそうな一領です。