遠山記念館トップ> コレクション> 日本漆工> 秋野蒔絵手箱
鎌倉時代 13-14世紀
高16.0 24.7×33.4
重要文化財
高蒔絵(たかまきえ)と付描によって全面に秋野の情景を表した手箱です。化粧道具や手回り品を入れるための箱で、内側の縁にはめる浅い箱の懸子(かけご)にも、菊や撫子などの秋草が描かれています。蓋表と各側面の秋草はどれも右からの風に大きくなびいていて、松葉までも左を向くほどの風です。
松の根元や土坡、水際の岩陰を見ると、行書体の漢字がいくつか隠し入れられています。その12文字をうまく並べていくと、『和漢朗詠集』に収められている源英明の詩となり、読み下すと「池冷ややかにして水に三伏の夏無し 松高うして風に一声の秋有り」とわかります。詩に親しむ人であれば、機知と記憶をためす謎解きの楽しみもある調度品でした。