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鈴木其一(1796-1858)
江戸時代 19世紀
絹本著色 196.2×55.0




『伊勢物語』は、色好みの美男として伝説化された平安の歌人・在原業平(825―880)を主人公にした歌物語で、成立当初から人気があったようです。そのためか物語の絵画化も早く、十世紀には絵巻などのかたちで鑑賞されたといいます。時代が下るにつれて、取り上げられる‘名場面’が固定化、第九段の「東下り」もそのひとつです。恋に破れて東国に旅立った主人公が駿河国に至って、初めて富士山を望みます。その雄大さと夏(旧暦)に雪を戴く姿に驚き、「時しらぬ山は富士の嶺いつとてか鹿子まだらに雪の降るらむ」と歌を詠む場面です。鈴木其一は江戸琳派の始祖・酒井抱一の高弟で、洗練された機知的な画風が魅力。この作品では、裂(きれ)であるはずの表具の部分を描いてしまう一種のだまし絵‘描表装’(かきびょうそう)の四季の花々が雅やかです。

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